※高城未来研究所【Future Report】Vol.709(1月17日)より
今週は、東京にいます。
日中、氷点下7度だったコロラドや大寒波が襲う英国から戻ったせいか、東京がとても暖かく感じます。
先週木曜日の夜には、この15年間の英国で最も寒い1月の夜が記録されたばかりですが、金曜日の早朝にはさらに気温が下がり、道路や鉄道の交通機関の混乱に関する広範囲にわたる警報が発令されたなか、逃げ出すように帰国便に飛び乗りました。
英国第2位の都市マンチェスター空港は大雪のため滑走路を閉鎖。
その影響がロンドンの空港にも及びました。
北部では、1メートルを超える積雪で、各地で大事故が頻発しています。
一方、東京は穏やかな日が続きます。
寒さがピークを迎えるこの時期、太平洋沿岸部では日中15度前後もあり、今年は東日本が高い気温傾向になると予測されています。
しかし、気候変動が常態化しているいま、毎年のように「記録的」という言葉をよく耳にするほどで、実際のところ予測はまったくアテになりません。
数年前までは「関東で積雪」といえば大ニュースでしたが、最近では真冬に雪より雨が降ることが増え、逆に春先や秋口に突然の雪や大雨が襲うケースも珍しくありません。
LAや英国の現状を考えると、「遠い国の災害の話」とは決して切り離せないと改めて実感します。
日本は火山や地震が多い国で、近年は大型台風や線状降水帯による豪雨など、世界的にもトップクラスの自然災害大国といえます。
さらに、大地震の危険性はいつどこで起こってもおかしくない状態で、台風と地震が重なったり、台風で地盤が緩んだところに地震が発生して大規模土砂災害に発展する事態も多発しています。
アメリカの大学や研究機関の報告によると、台風やハリケーンの大きな気圧変動が地殻変動を誘発し、大きな地震につながる可能性があると発表。
日本では四季を通じて台風や前線の気圧差が生じやすいため、今後ますます地震との複合災害が懸念される状況です。
実際、近年の大型台風が上陸したあとに強い地震が発生している例も多数あり、結果的に土砂災害や液状化などの二次被害が拡大しています。
こうした気候や災害のリスクは、首都圏や大都市圏だけに限らず、地方でも深刻な問題になっています。
日本では、豪雨による河川氾濫や浸水被害もますます増え、土砂崩れによる家屋の損壊などは全国どこでも起こり得ます。
今後、誰でも「移住せざるを得ない状況」が突然訪れるかもしれません。
いまや世界中、安堵できる定住地は見当たらないように思います。
山火事が続くLAでは、山岳波や気圧差による強風が異例の状態を生み出し、今までの「サンタアナの風」とは違う形で火災を煽っています。
乾燥した空気は高気圧の中心から時計回りに外へ流れていき、カリフォルニア州東部の砂漠地帯(MacOSの名前で知られるMojave)を横断して沿岸に向かって、砂漠と海岸沿いを隔てる横断山脈を通過する際に「山岳波」を生み出します。
これが下るにつれて気温は断熱的に上昇し、風はさらに勢いを増しながら山火事を拡大させる。
こうしたメカニズムによって今回のような大規模火災が発生しています。
しかし、ロサンゼルスのような大都市では、自然災害への備えを積極的にしている人よりも、都市型のライフスタイルに慣れてしまった「都会者」の比率が高いため、思わぬ被害(特に心理的パニック)が広がります。
今回のような都会を襲う大規模火災がLAで頻発すれば、今後はさらに多くの人(特に富裕層)がテキサスやフロリダなど他州へ転出し、LA全体の地域特性が大きく変化していくでしょう。
こうした極端な気象や災害のニュースを目の当たりにすると、やはり「どんなに住み慣れた土地でも、いつかは移住しないといけない状況になる」可能性を否定できません。
実は30年ほど前、今回焼け落ちたLAのエリアに住んでいました。
通っていたあの店は、どうなってしまったのだろうかと思いを馳せています。
ぬくぬくと温暖な冬の東京に暮らしていると忘れてしまいますが、資産の多寡とは関係ないリモートライフやモバイルライフこそが、災害や急速に変化する気候変動に対処する唯一の「安全地帯」なのだろうと深く考える今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.709 1月17日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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